株式会社日本旅行
老舗旅行会社が実践する
パーソナライズ化を軸とする
Webマーケティング戦略
~多様化する旅行スタイルやニーズに沿ったWeb予約サイトでのパーソナライズ施策~
株式会社日本旅行 原井川寿美氏、長﨑彩子氏、福田芽吹氏、辻井康一氏(写真左より)
導入製品:NOREN Content Server
訪日外国人観光客の急増や日本人の海外旅行の盛り返しを受けて旅行業界は総じて好調ですが、安閑としてはいられません。国内旅行に目を転じれば需要は長年横ばいが続き、他社との競争も激しさを増しています。また、いつでも欲しいタイミングで情報が得られるスマートフォンでの検索が主流になり、そうした中で要になるのが、お客様の多様化する旅行スタイルやニーズに沿ったWebサイト上での接客およびWeb予約や店舗への誘導方法です。
お客様の身近な旅行予約の接点としてWebサイトの利用価値向上を目指す日本屈指の大手旅行会社、株式会社日本旅行(以下、日本旅行)の取り組みを伺いました。
課題・目的
・旅行のスタイルやニーズが多様化し、お客様ごとに最適な接点を通じた接客および誘導方法が必要な時代となった。
・お客様のより身近な接点としてWeb予約の利用価値を向上するため、使い勝手の良いサービスへの改善を進めていく必要がある。
・Web予約サイトを利用するお客様のリピート化と会員化を目的としたパーソナライズ施策を展開していきたい。
■お客様に沿った接客誘導が必要な時代に
日本旅行は明治38年(1905年)に創業した、わが国で最も歴史と伝統ある総合旅行会社です。そして現在も、海外旅行、国内旅行、訪日旅行のすべてのカテゴリで業界のトップ5に入る健闘を見せています。しかし、旅行を取り巻く市場は大きく変化しています。
辻井康一氏
辻井氏 「旅行業界全体で見ると市場は右肩上がりにあります。訪日外国人観光客が急伸する一方で日本人の海外旅行も盛り返しており、2018年は過去最高となりました。しかし、国内旅行は横ばいが続いており、少子高齢化が進む中で今後もほとんど成長が見込めないだけに、今後どのような対応をしていくかが問われています」
旅行のスタイルそのものも変遷しました。
辻井氏 「かつて旅行といえば団体旅行がほとんどでしたが、人々の生活が豊かになるにつれて個人旅行が中心となりました。そして個人旅行の手配も、来店予約からWeb予約へと急速に移っています。来店予約のお客様のニーズは『自分で手配する手間が面倒』『適度な旅行情報を的確に欲しい』『こだわり手配の複雑な旅行がしたい』『特典やサービス内容を重視したい』といったものですが、これに対してWeb予約のお客様は価格重視。加えて『自分で計画するのが好き』『納得するまで調べたい』『予定が不確実で間際に決める』『旅行先に詳しいから自分で探せる』といった特徴があります。こうしたお客様に沿った接客誘導方法が必要な時代となっています」
お客様接点の強化に向けて、日本旅行ではどんなことに取り組んでいますか?
辻井氏 「来店予約はWebに取って代わられてしまう存在とならないように、専門家による価値の高い旅行提案サービスを提供するとともに、フェイスツーフェイスの接客を通じたご要望の受け止めと希望の実現をさらに強化していく必要があります。一方でWeb予約は、身近な旅行予約の接点としての利用価値をさらに向上すべく、より使い勝手のよいWebサービスへの改善、あらゆる接点での即時性をもった情報発信、お客様にとってタイミングの良い旅行提案などに注力していきます」
■WebディレクションチームにおけるNOREN活用術
日本旅行では、Web予約サイトを「Webマーケティング」「Webディレクション」「Webシステム」「ストラテジ・マネジメント」「Webコンテンツ」の5つのチーム体制で運用しています。大まかにはWebマーケティングとWebディレクションの両チームがお客様向けのフロント部分を担当し、Webシステム、ストラテジ・マネジメント、Webコンテンツの3チームがバックエンド部分を担当しています。
この中でWebディレクションチームが担っているミッションを教えてください。
原井川氏 「当社のWebサイトおよびメディアについて、使い勝手を改善しながら運営にあたるとともに、パーソナライズされた情報発信を行っています。具体的には、多くのお客様を集めてコンテンツをお届けするための『サイト運営』、使いやすいページで成約率を拡大する『サイト改善』、お客様の行動や属性に沿った情報提供でリピート率を向上する『CRM運営』の3つのミッションを担っています」
そうした中でNORENをどのように活用しているのでしょうか?
辻井氏 「NORENを用いたコンテンツ管理には、大きく3つの狙いがあります。1つは『季節ごとに変わる商品群のプロモーション』です。これにはとにかく迅速さが求められるため、個別にページをつくっていたのでは間に合わないのです。2つめは『出発地と目的地の組み合わせの多さ』への対応です。お客様の出発地が違えば目的地も異なり、それにあわせて商品ラインナップも多岐にわたって変化します。そして3つめが『全国に散らばる商品づくり』です。商品企画は出発地ごとに行われ、また国内旅行と海外旅行でも別仕立てとなります。各これらの拠点から殺到する依頼に私たちだけでは対応しきれません」
このように日本旅行では、商品造成から商品情報公開までのスピードアップを図るためにNORENを活用しています。現在、商品データベースからのAPI出力によって直接ランディングページを掲載する「半自動化型CMS利用」、定期情報発信の権限を国内および海外旅行商品部に移譲する「分散型CMS利用」という2つの施策を展開しているそうです。
辻井氏 「半自動型CMS利用では、NORENのページテンプレートにAPI経由で受け取った商品情報を表示する枠を設定。各ランディングページに設定された出発地や目的地などの条件に基づき、最新の商品情報を自動的に掲載できるようにしました。一方の分散型CMS利用では、各商品コンテンツにNORENの入稿枠を用意して掲載権限を委譲しました。細かいライティングのルールは特に設定せず、エリアごとの状況に任せています。このように商品部に対して、PRしたい商品のコンテンツを一定の制約のもとで掲載する自由度を提供しています」
NORENを活用することでどんなメリットを得られましたか?
辻井氏 「商品登録からサイト掲載までのリードタイムが短縮しました。また、『この商品情報を掲載してほしい』といった商品部からの依頼が減少しています。当初はNORENの使い方を説明する講習会などを実施しましたが、現在では商品部内でスキルの継承が行われるようになりましたので、ほとんど手間はかかりません。その分、私たちWebディレクションチームはコンテンツの細かな構成・修正作業から解放され、より重要な全社レベルの販促キャンペーンに集中できるようになりました」
一方でデメリットもあったのではないかと思います。
辻井氏 「商品部門に掲載権限を委譲したことで、どうしても誤字やリンク間違いなどのミスが発生します。ただ、現在ではそれらのミスの修正作業も商品部内でできるようになっており、改善速度はどんどん速くなっています。加えて担当者の人数が増えたことで、掲載ミスを発見するまでの時間も短縮されています」
そのほかNORENを活用する上での勘所があれば教えてください。
辻井氏 「NORENテンプレートは基本的に内製していますが、いったん作ったらおしまいではなく、定期的な見直しは必ず必要です。その意味でもメンテナンス作業が可能な制作者や制作会社を常に確保しておくことは重要なポイントとなります」
■パーソナライズ施策で判明した「リアルタイム重視」の重要性
NORENの活用以外の取り組みにはどんなものがありますか?
原井川寿美氏
原井川氏 「私が担当しているCRM運営では、お客様のリピート化と会員化を目的としたパーソナライズ施策を展開しています。たとえばメルマガでは、『JRセットプランで関西および関東方面を検索、購買、または関連のJR特集コンテンツを閲覧しているお客様に配信すると反応率が上がり、販売につながるのではないか』という仮説に基づいた方面パーソナライズ、『過去に高級フラグのあるホテルを購買または関連の高級特集コンテンツを閲覧しているお客様に配信すると、反応率が上がり注力商品の販売につながるのではないか』という仮説に基づいた趣味嗜好パーソナライズなどを実施しました」
これらのパーソナライズからどんなことがわかりましたか?
原井川氏 「過去の購買履歴に基づいたレコメンドよりも、現在閲覧しているコンテンツに着目したレコメンドを行ったほうが効果的であること。また、大人旅や女子旅といったお客様の属性イメージに基づいたレコメンドよりも、データを根拠としたレコメンドを行ったほうが効果的であることもわかりました。この結果から得られたのは、閲覧データを活用すべきという教訓です」
日本旅行では、NORENの連携ソリューションであるブレインパッドのレコメンドエンジン搭載プライベートDMP「Rtoaster」も導入しています。
原井川氏 「Rtoasterを活用したパーソナライズ施策としては、『学生関連ページを閲覧している人(スコア1以上)という条件を設定すれば、若年層のお客様にバナー(ポップアップのクーポン)を表示できるか』、『初回訪問、未ログインユーザで、なおかつ5ページビュー以上という条件でバナーを表示した場合、お客様の会員化につながるか』、さらに『初回未購買、未ログインユーザで、なおかつ3日連続訪問という条件でバナーを表示した場合、検討がより深いということでより効率的な販売につながるか』といった仮説検証を実施しました」
こちらの仮説検証についてもぜひ成果を教えてください。
原井川氏 「未ログインのお客様であっても閲覧傾向から根拠に基づいたレコメンドはできるということ、リアルタイムの閲覧データは必要なタイミングで活用できることがわかりました。この結果からも、リアルタイムの閲覧データや蓄積されたスコアをもっと活用すべきという確信を得ることができました。したがって今後はお客様情報や閲覧履歴、プラン情報、購買実績などのデータをRtoaster経由でWebサイトのみならずメルマガやSNSなどにも展開し、リアルタイムのアクションの幅を広げていきたいと考えています」
■店舗予約とWeb予約のシナジーを追求していく
日本旅行として、今後どのようなパーソナライズを追求していくのでしょうか?
辻井氏 「当社の店舗対応は、サービス産業生産性協議会が実施する2018年度のJCSI(日本版顧客満足度指数)の旅行部門で1位を獲得するなど、お客様の心をとらえ、満足度の高いサービスを提供できていると自負しています。しかし、先にも述べたように旅行予約はさらにWebにシフトしていくことが避けられません。その意味でも、Web上でパーソナライズされた接客をさらに進化・深度させていく必要があります。お客様にとって、より身近な接点としての体験価値を向上していかなければなりません」
Web予約ではデータ活用を中心としつつ、店舗予約で培ってきたホスピタリティをシステム化していきます。一方で店舗予約でも人のホスピタリティを中心としつつ、Web予約で獲得したデータを積極的に導入・活用していきます。この相互補完のシナジーによって競争の激化する旅行業界を生き残っていくというのが日本旅行の基本戦略です。
導入のポイント
・商品データベースからのAPI連携によって、ランディングページへの自動生成が可能
・定期情報発信の権限を業務の担当者(国内・海外旅行商品部)に移譲が可能
※掲載内容は、取材当時(2019年5月)のものです。現時点の情報と異なる場合があります。
会社名 | 株式会社日本旅行 |
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URL | https://www.nta.co.jp/ |
本社 | 東京都中央区日本橋1-19-1 日本橋ダイヤビルディング12階 |
設立 | 1949年1月28日 (1905年11月創業) |
事業内容 | 旅行業を始め、各種乗船券・入場券・観覧券等の受託販売、旅行商品の企画造成、インターネット・店頭・提携による販売、旅行に関する図書・雑誌等の刊行、MICEのトータルプロデュースなど幅広く展開 |
従業員数 | グループ全体 4,982名 ※2019年4月1日現在 |
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