大日本印刷株式会社

7年ぶりにWebサイトをリニューアル
CMSのフル活用と改善への意識改革で新しい企業価値を発信

~ガバナンスを維持しつつユーザ視点のコンテンツ発信を迅速化~

大日本印刷

大日本印刷株式会社 福田聡氏、向野純一氏、吉田幸司氏(写真左より)

導入製品:NOREN Content Server

世界的な総合印刷会社として知られる大日本印刷株式会社(以下、DNP)。
同社は、「P&I(Printing & Information)」つまり印刷技術と情報技術の強みを掛け合わせつつ、パートナーとの協業を通してさまざまな社会課題を解決するための価値を創出する「第三の創業」の過程にある。
そんな中2018年8月に行ったのが、DNPグループのWebサイトリニューアル公開だ。
前回2011年に実施したリニューアルから引き続き、サイト運用の基盤として採用したCMS「NOREN」を使い、グループを挙げて取り組んでいる今回のプロジェクトの狙いと成果について訊いた。

課題・目的

・DNPグループのWebサイトを「視野の広い企業活動」「革新的な事業開発への姿勢のアピール」を目的とし刷新。
・コーポレートマーケティングページとビジネスマーケティングページを切り分け、コーポレートサイトと新設したビジネスサイトの役割・コンテンツを定義し、その両輪でデジタルマーケティングを推進。
・広報室Web担当者に依存した属人化運用からグループ内での分散型運用への転換。

■「視野の広い企業活動」と「革新的な事業開発への姿勢のアピール」を新たなWebサイトが担っていく

DNPにおけるこれまでのWebサイトへの取り組みを振り返ると、前回の大きなリニューアルは2011年にさかのぼる。今後の事業拡大のためには会社全体としてのコーポレートブランドイメージの統一と自立的かつ統制された情報開示が不可欠という考え方に基づき、Webサイトを刷新したものだ。具体的にはCMS(コンテンツ管理システム)としてNORENを活用し、事業部門ページの内容充実、更新頻度の高いページのCMS化、広報室Web担当者個人に依存した運用体制からグループ内での分散型運用への転換などを図ってきた。

今回のリニューアルは、この課題と成果を改めて評価しつつ、Webサイトのさらなる進化を目指すものとなる。そこで掲げられたのは、次のような基本方針である。

まず社会が抱えるさまざまな課題に対して、Webサイトを「DNPグループの技術と事業の可能性がもたらす肯定的な未来像」を能動的に語る場とする。また、サイト訪問者の発想を刺激し、「DNPグループがつくり出す新しい価値」への理解と共感を促し、社会・生活者との有機的なつながりを醸成していく。

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向野純一氏

プロジェクトを主導するDNP コーポレートコミュニケーション本部 Web戦略室の室長を務める向野純一氏は、「DNPグループ自身が社会や生活者の動向を注視し、積極的に働きかけを行っていきます。そうした『視野の広い企業活動』『革新的な事業開発への姿勢のアピール』を、DNPグループのWebサイトが目指すべき姿として位置付けました」と、今回のリニューアルの狙いを示す。

受注産業で身についた企業風土から「能動的に、積極的に働きかけていく」という姿勢をWebサイトでも実現するということだ。

■コーポレートサイトとビジネスサイトの両輪で広義のデジタルマーケティングを推進

2017年にスタートした今回のWebサイトリニューアルのプロジェクトで、大きな柱となったのは、コーポレートマーケティングページとビジネスマーケティングページの切り分けだった。

コーポレートコミュニケーション本部 Web戦略室の福田聡氏は、「これまでの事業部門サイトという考え方を廃止し、製品・サービスを紹介するページでは、18種類のカテゴリ分類やユーザの持つ課題別分類など、ユーザ視点に立ったビジネスサイトを新設することにしました。そもそもユーザが関心を持っているのは商材であり、DNPの事業部門そのものではないからです」と語る。さらに同室の吉田幸司氏が、「コーポレートサイトについても、より魅力的で特長のあるオリジナルコンテンツづくりに注力していくという方針を打ち出しました」と訴求する。

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吉田幸司氏

新たに開設したビジネスサイトは、広義のデジタルマーケティングの取り組みを支えるものだ。DNPグループが提供する製品・サービスの詳しい内容や魅力を発信し、それらが顧客の抱えている課題解決に役立つものであることの理解を促す。その結果としてサイト訪問者を見込み顧客に転換し、問い合わせ、引き合い、さらに取り引きの増加につなげていくのだ。また、顧客との関係性を強化し、DNPグループへの好感度を高めていくことを目指す。「そのためにも、常にファクトに立脚したコンテンツを提供していくことが基本となります」と、吉田氏は強調する。

一方のコーポレートサイトは、ブランドイメージ向上を梃子に「企業価値の創造」を目的とする。DNPグループの企業理念、事業ビジョン、今後の成長戦略、これまで積み上げてきた技術などを軸としたコンテンツを通じて、より多くのステークホルダーとの対話や協働を深め、その人々の理解と期待を高めていくことを目指す。したがってコーポレートサイトでは、ファクトを超えた可能性についても恐れず言及するという。「DNPグループが描いている未来や夢を積極的に語りかけ、『面白いことを考えている会社だ』と思っていただけるようなコンテンツを、どんどん発信していきたいと思います」と吉田氏は語る。

■Webサイト運用の中核にCMSを据え、デジタルマーケティング機能を柔軟に連携させる

今回のWebサイトリニューアルでもDNPは、引き続きCMSの基盤としてNORENを採用することとなった。

ただし、NORENありきでプロジェクトに着手したわけではない。「他社のCMS製品と比較検討したことは事実です」と振り返るのは向野氏だ。それでもなお、最終的にはNORENを継続利用することを決めたのはなぜだろうか。

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福田聡氏

私たちが目指しているWebサイトにおいて、オールインワン / スイート型のCMS製品は必要ありませんでした。むしろスタック型のNORENのほうが、Webサイト運用の中核にCMSを据えてデジタルマーケティング機能を柔軟に連携できるなど、はるかに使い勝手が良いのです。そうした中で、承認ワークフロー機能を活用できることも大きなメリットでした」と福田氏は話す。

さらに「多くの事業部門のWeb担当者やグループのWeb制作会社で分散運用しているコンテンツの企画・制作・公開というプロセスを、コーポレートコミュニケーション本部で確認した上で公開できる大規模な運用体制にスムーズに移行できるなど、これまで築いてきたノウハウを継承できる点でもNORENは有利でした」と福田氏は話す。

もっとも、売る側(プロダクトアウト)の視点から情報発信を行ってきた事業部門サイトを廃止し、ユーザ側(マーケットイン)の視点に基づいて情報発信を行うビジネスサイトへ移行するためには、社内の関係者全員の意識改革が不可欠であり、それはCMSツールだけで成し遂げることができない。

そこで活躍したのが、一般社団法人ウェブ解析士協会(WACA)が運営するウェブ解析士の最上級資格「ウェブ解析士マスター」の認定を受けた一人のスペシャリストである。

「現在は営業部門に所属する女性社員ですが、長くWeb関連の仕事をしていた関係から、プロジェクトメンバーとして参加してもらい、Webサイトのアクセス解析やそのレポーティングを担当してもらっています。多数の商材ページを多角的な解析の観点から評価し、数値化した『コンテンツ通信簿』を考案。定期的に開催しているビジネスサイトの責任者会議で配り始めたのです。このレポートには自分が担当する商材ページが、お客様からどのように見られているのか定量的な点数で示されており、皆の目の色が変わりました。そして少しでも点数をアップすべく、コンテンツの改善に真剣に取り組むようになりました」と向野氏は、状況が変化しつつある様子を語る。

■コーポレートブランディング施策を効果的に進めるためのツールを準備できた

Webサイトのリニューアルが進む中で、DNPグループの実務にはどんな変化や効果があらわれているのだろうか。

向野氏は「ガバナンスの向上」を挙げ、「CMSの適用範囲の拡大に伴い、自部門から発信するコンテンツについて、そのあり方や社内外からの反応を強く意識するようになりました。これは今後のビジネスサイトの展開を支えていく『分散型のガバナンス』の初めの一歩となっています」と語る。

また、「グループ会社のサイトデザイン統一とCMS導入を進めたことにより、コーポレートブランディングをグループとして効果的に進めるためのツールを準備できました」と語るのは向野氏だ。実際、コーポレートサイトのコンテンツ更新についても、コーポレートコミュニケーション本部のメンバーで機動的に行うことが可能となった。

さらに吉田氏は、NORENならではの特長となっているブロックデザインテンプレート「陣」の活用について触れた。「HTMLの知識を持たない社員でも最適なページレイアウトでWebコンテンツを制作することが可能となり、タイムリーな情報更新や各事業部門での分散運用を実現しています。さらにコンテンツ制作費の抑制とリリースまでのリードタイム短縮を図るとともに、それによって得られた時間と工数をコンテンツ制作に充当するという好循環を築いています」と語る。

もっとも、Webサイトリニューアルはまだ道半ばであり、今後もさらなる改善を進めていく計画だ。例えばリニューアルしたサイトのユーザ調査の結果から、まだスマートフォンからの情報検索性に課題が残っており、マルチデバイス環境でのユーザビリティの向上が急がれる。

また、今回のプロジェクトでは国内の事業部門のみを対象としてきたが、今後は海外のグループ会社に対してもコンテンツ制作や運用面の体制を強化していく必要がある。「日本語サイトを単にミラー化した各国語サイトを用意するだけでは不十分。本当の意味でのグローバルサイトの在り方そのものを議論し、検討していきたいと考えています」と向野氏は、今後の取り組みを見据えている。

導入のポイント

・Webサイト運用の中核にCMSを据えてデジタルマーケティング機能を柔軟に連携でき、使い勝手が良いこと。
・ブロックデザインテンプレート「陣」を活用することで、HTMLの知識を問わず、各事業部門でのWebコンテンツ制作、タイムリーな情報更新などの分散運用を実現。
・事業部門のWeb担当者やグループ企業で分散運用しているコンテンツの企画・制作・公開というこれまでのプロセスを、承認ワークフロー機能を利用し、コーポレートコミュニケーション本部で確認した上で公開する大規模な運用体制にスムーズに移行できた。
・これまでかかっていたコンテンツ制作費やリリースまでのリードタイムを抑制でき、それによって得られた費用と工数をコンテンツ制作に充当できるようになった。

※掲載内容は、取材当時(2019年3月)のものです。現時点の情報と異なる場合があります。


会社名 大日本印刷株式会社
URL https://www.dnp.co.jp/
本社 東京都新宿区市谷加賀町一丁目1番1号
設立 1894年1月19日
事業内容 印刷・出版事業をはじめ、情報技術を基盤に包装、建材、ディスプレイ製品や
電子デバイスなどのエレクトロニクス分野、環境・エネルギー分野、
ライフサイエンス分野など幅広く展開
従業員数 連結38,051名 ※2019年3月末現在

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