2014/11/26
ユーザー目線にこだわったWebサイト実現の心得
(アクアリング共催)
※本稿は、2014年11月26日に名古屋で開催された「ユーザー目線にこだわったWebサイト実現の心得」(名古屋会場)のセミナー講演録です。
スマートフォンやタブレットなどの急速な普及により、ユーザー(お客様)が情報を欲しい!と思ったタイミングで容易にコンテンツにアクセスできる時代になりました。ユーザーの満足度を上げるためには、企業本位の画一的なものではなく、ユーザーの背景や状況(コンテキスト)に合わせてコンテンツを考えなければいけません。
本セミナーでは、サイト構築の成功の鍵となる「プロジェクト計画」の勘所や、運用イメージなどを複数の事例を取り上げました。キーノートには、Webサイト第1回Webグランプリ「企業グランプリ部門企業サイト賞」にてグランプリを受賞した中部国際空港株式会社(セントレア)の村松氏をお招きし、発注者と制作会社が二人三脚で実現したサイトリニューアルの経緯、反省点など具体例を挙げていただきながら、ざっくばらんにお話をお聞きすることができました。
当日は多くのお客様にご来場いただき、アシスト名古屋オフィスに併設されたセミナールームは満員御礼となりました。
ユーザー目線にこだわったセントレアのサイトリニューアル
~Web企業グランプリ受賞サイトの発注側と受注側の裏側明かします~
最初のセッションでは、セントレアのWebマスターである村松氏、そして村松氏と2人三脚でセントレアのWebサイトを作り上げたアクアリングの吉村氏が登壇し、リニューアルに至った背景から、プロジェクト進行において特に苦労された点をお話されました。
ちなみに、セントレアという空港をご存知でしょうか。
日本で初めて民間主導で開発された空港であり、正式名称は「中部国際空港株式会社」、通称がセントレアです。所在地は伊勢湾の造られた人工島の上にあり、名古屋駅からは空港特急「ミュースカイ」を使うと28分でアクセスできるそうです。
成田国際空港や羽田空港、関西国際空港と比較すると搭乗者数では及ばないものの、国際空港評議会(ACI)監修による顧客サービス評価で2年連続の1位を獲得するなど、そのホスピタリティは国際空港として高い評価を得ています。
このようにリアルにおいては高い評価を得ている反面、Webサイトについては、各部署から寄せ集めたコンテンツを詰め込んだ結果、必要以上に縦に長くなって読み難いページになっており、このままでは、セントレアのイメージダウンに繋がってしまうという危機感があったそうです。(村松氏)
そのような状況を打破するべく、Webマスターとして村松氏が最初に取り組んだのが「Webサイトリニューアルの企画作り」です。
しかし、リニューアルに対する強い想いは持ちつつも、社内を納得させられる企画が作れないまま時間は過ぎていったそうです。
「既存サイトの日々の運営に追われて、企画を詰める時間が作れないですよね。さらに、(ステークホルダーである)社内の各部署の担当者を納得するために必要な経験値も、理論武装も足りず、第三者的な専門家を見方に付ける必要性を痛感しました。」(村松氏)
そこで、村松氏は外部のセミナーや勉強会に参加して、ベンダーからの売り込みも積極的に受け入れながら広く人脈を作り続けました。その活動を通じてアクアリングの吉村氏と出会います。そこには、信頼しつつも、馴れ合いの関係ではないドライな駆け引きがあったとのこと。
「要件定義と制作フェーズはあえて分けましたし、それぞれにコンペを実施しました。本気度を制作会社に伝えたいという気持ちもありましたね。制作会社と我々のような発注者は、本質的には分かり合えないと思います。だからこそ、お互いを理解して良いWebサイトを作ろうという姿勢で付き合っていけるかという部分が大切でした。」(村松氏)
次のセッションでは、アクアリングの吉村氏がリニューアルのプロジェクト進行において大切にしていた部分をご説明されました。
「プロジェクトの開始後、最初に"リニューアルの目標"を設定しました。特にペルソナについては、あえて文章で表現したことが良かったと思います。」(吉村氏)
次に、定量調査だけじゃなく、定性的な調査をきっちりやることの重要性を説明されました。アクアリング社は、今回のリニューアルにおいて空港施設に関するインタビュー形式の調査を実施されています。
「アンケート用紙を配って記入してくださいという形式の定量調査をやると、大抵の場合は想像した通りの結果になります。そこで定性調査を通じて、本当に欲しい情報を集めます。」(吉村氏)
空港の利用者に対してインタビューという形で「ユーザー」の生の声を拾い集めることで、どういったシチュエーションで、どんなニーズを持ちながらセントレアのWebサイトを訪れるのかを把握されたようです。
また、インタビューを実施する中で「飛行機の写真を撮りに来ました」という女性がいたそうです。これによって、本来の機能やサービス以外のものを期待して訪れるエクストリームユーザーが存在することを制作側としても認知し、あらためてセントレアはそれ自体が観光施設でもあるという前提でWebサイト制作に取り組めたとのことです。
この他にも要件定義フェーズにおいての勘所として、例えば、BtoBサイトの場合にはターゲットとするユーザーの明確と優先度の設定を先行させることで、サイトのコンセプトやコンテンツの定義が容易になることなど、実践的な手法を紹介いただきました。
最後に、吉村氏は「良いWebサイトを作るためには、制作側がどれだけユーザー目線で取り組めるかが大切です。」とセッションを締めくくられました。
Web企業グランプリ受賞サイトを支えるCMSとは
続くセッションでは、のれんの八木が登壇し、"Web企業グランプリ受賞サイトを支えるCMSとは"と題して、ユーザーのニーズを汲み取ったWebサイト制作の重要性を取り上げて、コンテキスト(文脈)を上手に取り入れるための手法を紹介しました。
まず最初に、Webサイト制作と運用におけるコンテンツ充実が軽んじられているケースがあることを問題提起しました。例えば、Webサイト制作で必要とされるLPOやレコメンド、パーソナライズやSEOといった機能要素と同列にコンテンツ管理が語られることがあるが、実はコンテンツの充実なしに、パーソナライズもSEOも成り立たないことを説明しました。
その上でコンテンツだけでなく、コンテキストが重要視されている背景として、スマートフォンなど多種多様なデバイスが登場し、あらゆる場所からWebサイトが参照される状況になったことで、ユーザーがどういったシーンで、何を求めてアクセスしているのかというコンテキストの把握が必須となっていることを取り上げました。
次に、コンテキストの把握や、Webサイト制作の戦略へ反映するための具体的な手法を紹介しました。例えば、多種多様なコンテキストを把握するために役立つ「カスタマージャーニーマップ」については、自らの作例を用いながら、複雑に絡みあうコンテキストの情報を視野を広げつつも、Webサイト制作に戦略的に活かすために絞り込むといった整理に役立ちます。
また、ユーザーのニーズに対して、自社のWebサイトが提供しているサービスや機能の過不足を確認するためには、メンタルモデルを用いてギャップとなる領域を明らかにすることが有用です。
最後に、NORENの活用事例を紹介し、セッションを締めくくりました。
大規模サイトリニューアル成功可否を握る
「プロジェクト計画」の押さえどころ
最終セッションでは、アクアリングの藤井氏より、"プロジェクト計画の押さえどころ"と題して、ここ数年でWeb制作の現場にも急速に浸透しているというプロジェクト管理の標準化について紹介されました。
アクアリング社では、Web業界にかぎらず活用されているプロジェクト管理の標準である「PMBOK」をベースにして独自のプロジェクト遂行を実践されています。具体的には、現場で使っているプロジェクト計画書の紹介や、自身の体験談を踏まえたTIPSが盛り込まれたセッションでした。
「突然の事故など、予期せぬ事態は必ず起こります。それらが起こってしまうという前提で、どう備えておくかという視点が大切です。」(藤井氏)
備えのポイントは、おおまかに3点とのこと。
・スケジュール管理の観点
・体制と承認フローの観点
・スコープの押さえどころ
最後に、藤井氏に「リスクを担保しながらプロジェクトを効率良く進めることで、ユーザー目線のWebサイト制作に専念できるようにすることが、アクアリングにおけるプロジェクトの管理の最大の目的です」と締めくくっていただきました。
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