2018/06/06
AIチャットボットでデジタルコミュニケーションが変わる!
※本稿は、株式会社アイアクトとの共催により、2018年6月6日に開催した「AIチャットボットでデジタルコミュニケーションが変わる!~遠州鉄道 / たびゲーターに学ぶ、社内推進・活用のススメ~」のセミナー講演録です。
AI(人工知能)のビジネス活用に注目が集まっている近年、本当に使えるのか、何を選べば良いのか、どのように導入すれば良いのか、様々な不安を抱えているご担当者様も多いのではないでしょうか。
今回は、特に“AIチャットボット“の活用に対象を絞り、既に導入・運用をされている遠州鉄道様 / たびゲーター様にご登壇いただき、具体的な利用シーンとその結果、社内での推進方法についてお話しいただきました。
あわせて、AIチャットボットを活かすために必要となるWebサイトの管理やサイト改善の運用基盤づくりについてお伝えしました。
当日は、多くのお客様にご参加いただき誠にありがとうございました。Q&Aも盛り上がり、AI、チャットボットへの関心の高さを感じるセミナーでした。
・会話構築のコツ(文面・誘導)が参考になりました。
・実務担当者として、どのような知識、行動が必要なのか本セミナーで理解が深まりました。
・導入の苦労と、苦労をしてでもAIチャットボットを選択するメリットがわかりました。
・今後、「社内の連携体制」の事例などもあれば知りたいです。
<アンケート回答より>
■第1部
チャットボットはWebサイトをどう変えるのか
株式会社アイアクト 取締役CTO 兼 人工知能・コグニティブソリューション担当 西原 中也氏
はじめのセッションでは、西原氏が、AI、チャットボットの市場動向や、チャットボットは本当にビジネスで使えるのか? チャットボット活用の可能性について、Watsonや『Cogmo Attend(コグモ・アテンド)』のデモを交えながらお話しました。
国内企業でもチャットボットの導入は進んでおり、FAQやお客様サポートでの使用だけでなく、JALのバーチャルアシスタント「マカナちゃん」のようにFacebookやtwitterと連動してお客様のタイプや条件に合わせた旅先を提案する、というようなマーケティング用途でも使われ始めています。チャットボット市場は、2021年までに5年前の約28倍にもなると言われており、AI市場の成長率16倍を上回る勢いで拡大していくことが予測されています。
では、企業がAIに取り組む際に、なぜチャットボットが多いのか?
・導入・構築期間が短い(1~2ヶ月)
・費用が安い(高くて数百万円)
・導入後も“雨後の竹の子“のように新たな用途のアイデアが溢れ出す
コンパクト&スピーディな導入、用途が多様だという理由から、チャットボットからスタートする企業が殆どなのだそうです。
次に、チャットボットに関する誤解を解くべく、チャットボット導入において失敗しないためのポイントとして以下の点について解説しました。
・ツールの選定(AIであること、一問一答型より分岐型)
・チャットボットの範疇・役割
・答えに導く会話設計テクニック
設計、使い方次第で、AIチャットボットは十分にビジネスに使えることを証明した上で、さらに、巨大ECサイトのコールセンター業務、不動産企業の社内IT問い合わせ対応、保険会社の見積もり依頼システムなどの事例を交えながら、チャットボットの導入効果を数値でご紹介しました。
続いて、チャットボットでデジタルコミュニケーションがどう変わるのか?という確信に迫りました。
主にWebサイト上でのマーケティング施策の内、①集客、②醸成・フィルタリング、③顧客獲得 において、特に②③のフェーズにチャットボットは有効であると述べ、AIチャットボットは、知りたい情報を的確に答えてくれ、「ツール」ではなく「相手(人)」としての対応ができ、WebだけでなくLINEなどを通じて、PV、Pushだけの世界では構築できなかった顧客とのエンゲージメント構築ができると語りました。
最後に、AIチャットボット『Cogmo Attend(コグモ・アテンド)』をご紹介し、導入までの工程や期間、費用感などをお伝えして締めくくりました。
■第2部
保守的な体質の企業がチャットボットを導入した理由とその奮闘
遠州鉄道株式会社 経営企画部 ICT推進課 赤星 彩氏
次に赤星氏からは、社内でのAIチャットボットの活用事例として、導入の背景から製品選定理由、導入時の奮闘をお話しいただきました。
静岡県浜松市に本社を置き、鉄道・バスなどの運輸事業をはじめ、遠鉄グループとしては、不動産事業や百貨店などのリテールサービス事業、レジャーサービス事業などを幅広く展開する遠州鉄道様。浜松市が直面する人口減少問題を背景に、ITを活用した生産性向上が課題だったそうです。
「働き方改革」というテーマ一つとっても、
2016年: “いつでもどこでも働ける環境を“
「ペーパーレス化」「Web会議」「リモートワーク」などのキーワードから、
2017年: “人間は付加価値の高い仕事へ”
「AI」「IoT」「RPA」という流れに変わり、赤星氏が所属する部門でも、最新技術「AI」の調査に着手されたそうです。
AIの得意分野である ①画像認識、②音声認識、③言語処理、④分析予測 の中で、事前にデータがなくても(自分たちがQAセンテンスを登録すれば)始められる「③=AIチャットボット」の導入を決断し、さらに、各種チャットボットを比較した結果、以下の理由で『Cogmo Attend(コグモ・アテンド)』を選択されたそうです。
・会話の拡張性が高い(分岐・絞り込み、選択肢表示、カテゴリ分け、有人対応切替、DB連携など機能が充実)
・自社でQA登録可能
・回答精度の理由がわかる・自社で精度向上可能
・サポート対応が早く、柔軟
・権限分けも問題なし
・他社に比べると安価に始められる
・グループ全体展開しても、費用が安く抑えられる
次に、チャットボット導入時の奮闘や、やりがちな失敗についてお話しいただきました。実際に携わられた担当者ならではの視点で、思わず笑ってしまうエピソードも交えながらのお話に、ご参加者も熱心にメモを取られたり、大きくうなずきながら聞かれていました。
チャットボット導入時の奮闘
・費用対効果の試算(問い合わせ対応をしている社員の人数と質問対応時間の算出)
・QAの作成(質問文の言い回しを複数パターン、回答文の読みやすさ)
・辞書の登録(単語のレベル、カテゴリ)
・ユーザへの教育(質問の入力の仕方、チャットボットの学習への理解)
× | ○ |
---|---|
あらゆる質問を盛り込む | ある程度、カテゴリ分け |
とにかくQAを集める | 1000問より主要な質問100問 |
告知すれば自然に広まる | 目の前で見せる、問い合わせを受ける度にリンクを共有 |
最後に、今後は、社内向けチャットボットの精度向上に加え、遊園地ホームページ上に一般のお客様向けのチャットボットを設置される予定である旨、展望を述べられました。
小さく始めて一度成果を上げて、導入イメージを掴んでから活用の場を広げていくというのが、成功への近道かもしれません。
■第3部
お客様サポート機能として“AI”チャットボットを導入した理由
株式会社たびゲーター デジタルコマース事業部 マーケティングチーム 日野 みゆき氏
次のチャットボット活用事例として、日野氏より、コールセンターでのお客様対応のBefore / Afterをお話しいただきました。
Yahoo!トラベルや法人向け国内旅行サービス、ふるさと納税お礼品提供なども手掛け、インターネットを利用した旅行商品を販売するたびゲーター 様。オンライン旅行会社でありながら、お客様サポート機能は有人対応のコールセンターが担っており、日中のみ営業しているのが現状でした。
先ず、取り組みの一歩として、予約からお問い合わせまでのお客様の行動を軸に、お客様対応の流れを整理することから始めたそうです。そこで見えてきたことは、お客様対応をしている「コールセンター」「宿泊施設」「ヘルプページ」それぞれに、問い合わせへの対応範囲や対応時間の観点でメリット / デメリットがあることでした。
そこではじめの改善策として、お問い合わせをしたいお客様が先ず訪れる「ヘルプページ」の改修に着手。スピーディーにWebサイトで情報公開するために、コンテンツの編集が容易にできるCMSを導入しました。ヘルプページの構成を「サービス別」からお客様視点の「質問別」に変更することで、約250ページもあったページが約130ページに整理できたそうです。
次に、時間外の対応、ヘルプページでカバーしきれない問い合わせに関する解決策を検討し、24時間対応可能で、ヘルプを探さずに解決可能で、人件費の軽減ができる“チャットボット”を導入することにしました。さらに、各種チャットボットを比較・検討した結果、以下の理由で無脳型チャットボットではなくAIチャットボット『Cogmo Attend(コグモ・アテンド)』の採用を決定されたそうです。
・会話の絞り込みができる
・大量のQ&Aデータ作成が不要
・手の届く費用で導入できる
日野氏は、1000件近くものコールセンターの対応メールを読み込み、内容を理解した上で、チャットボットに登録すべき質問・回答を取捨選択していったそうです。ログデータとして一括して登録するのではなく、この地道な努力は、お客様の直接の声(お客様が使う言葉)を拾うことにもつながり財産になったと仰います。例えば、お客様にとっての「予約変更」は、旅行会社にとっては「予約取消」+「新規予約」であったり、お客様が使う言葉と企業側が使う言葉のギャップを埋めることにもつながります。
3月下旬のAIチャットボット運用開始から2ヵ月が経ち、自然文ではなく、まだまだ「単語(スペース)単語」での問い合わせが多かったり、複数の質問を1度に入力されるお客様もいらっしゃるそうですが、基本的にサービス全般に24時間対応できる上、CMSとの連携で該当ヘルプページをダイレクトに表示できるようになったそうです。
当初、社内からは、AIによってコールセンターのオペレーターの仕事が無くなっていくのでは?という声もあがったそうですが、お客様の個別の状況に合わせた対応や、相談・クレームなど会話によって解決される対応力の向上は、今後もコールセンターに求められることであり、即時の回答率向上、予約のサポートに留まらず旅行アドバイスや提案ができるAIチャットボットに育てていくことが使命だと語り、お客様対応は、「人」と「AI」の二分化と共存していく時代だと捉えていると日野氏は述べました。
■第4部
チャットボット活用の際に準備しておくべきポイント
株式会社のれん 営業推進部 部長 八木 康介
最後のセッションでは、CMSベンダーの視点で見えてきた、AIチャットボットを自社サイトで活用する上で考慮すべきポイントをお伝えしました。
AIチャットボットを顧客とのコミュニケーション接点とし、
顧客が求めている情報は何かをAIが理解し、
適切なコンテンツへ誘導する。
チャットボットを活用するためには、Webサイトが無いと成り立ちません。最近の提案傾向として、CMSベンダーもチャットボットやマーケティングオートメーションも合わせて提案する時代になったと八木は語ります。
企業がデジタルマーケティングを実践する上で最初にやるべきことが、Webサイトの構築です。チャットボットやマーケティングオートメーションなどマーケティングツールからの誘導先となるページ(大量のコンテンツ)を制作する必要があります。マーケティングツールは、コンテンツを自動で作成・管理してくれるわけではないため、そこで、コンテンツ制作・管理を支援するツール「CMS」が必要になるのです。
さらに、チャットボットとCMSの関係性について、以下2つの観点で解説しました。
① Webサイトのデータとチャットボットの連携方法
チャットボットがWebサイトをクローリングし、サイトデータを蓄える、または、APIやXMLによりCMSからAIチャットボットにデータを渡す方法があり、それぞれにメリット / デメリットがある。
② コンテンツのメタ情報やIA(Information Architecture)などを管理する
コンテンツのメタ情報を管理するCMSとチャットボットを連携することで、お客様が見るWebページ上には表示されていない情報も取得することができる。それによって、お客様が求めるものに、より適した回答がチャットボットでできるようになる。
将来のテクノロジーへの追随を見据えた時、様々なツールやサービスと“いかに容易に連携できるか“が成果を発揮できるCMSの選び方だと述べ、チャットボットの他、サイト内検索ツールやマーケティングオートメーションとの連携させた利用シーンについてもご紹介しました。
また、たびゲーター日野様のお話のように、サイト訪問者(お客様)の頭の中とWebサイト管理者の頭の中とは、カテゴリや言葉の使い方が異なりがちです。そのため、お客様がチャットボットに入力した質問文を分析し、例えば、ヘルプページの構成を「サービス別」から「質問別」に変更するなど、入り口ページをお客様の思考に合わせて改修する必要があると述べました。そこでもCMSが有効であり、サイトの構造の変更を容易にします。
FAQページをお客様が使いやすいように改善しただけで、コールセンターのお問い合わせ数を大幅に削減されたバッファロー様の事例などをあげ、AIチャットボットを活かし、顧客を快適に目的達成に導く方法として、Webサイト側で考慮すべきポイントをお伝えしました。
チャットボットは企業と顧客のコミュニケーション接点としてだけでなく、顧客のニーズを探るツールとしても、ナビゲーションにも使えます。また、マーケティングオートメーションと連携し、「ツール」とも「人」とも異なる適度な距離感でお客様に情報の入力を促すことができます。お客様からお問い合わせが入る前に先手の営業活動ができるようにもなり、競合の一歩先をいきたいと思う企業にとって理想のマーケティング活動を実現できると締めくくりました。
講師による質疑応答
【プログラム概要】
【第1部】「チャットボットはWebサイトをどう変えるのか」
株式会社アイアクト 取締役CTO 兼 人工知能・コグニティブソリューション担当 西原 中也氏
【第2部】「保守的な体質の企業がチャットボットを導入した理由とその奮闘」
遠州鉄道株式会社 経営企画部 ICT推進課 赤星 彩氏
【第3部】「お客様サポート機能として"AI"チャットボットを導入した理由」
株式会社たびゲーター デジタルコマース事業部 マーケティングチーム 日野 みゆき氏
【第4部】「チャットボット活用の際に準備しておくべきポイント」
株式会社のれん 営業推進部 部長 八木 康介
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